多店舗を運営する企業にとって、ラウンド業務(巡回業務)は現場改善の要です。
しかし実際には、情報共有が不十分、報告が形骸化している、指摘が定着しない…といった多くの非効率が存在します。
こうした問題は、単なる「担当者のスキル」ではなく、仕組みやツールの設計に起因することも少なくありません。
本記事では、大規模ラウンド業務にありがちな課題とその構造的な要因を整理しながら、改善に向けた考え方や仕組みづくりのヒントをご紹介します。
大規模な店舗巡回とは?
店舗巡回(ラウンド業務)は、チェーン展開している企業や複数拠点を持つ組織において、現場の状況把握や改善指導、販促支援などを目的として実施されます。これが「大規模に」なるとは、例えば以下のような状況を指します。
まず、一日に実行する業務の件数が多くなります。例えば、一日に千件以上の訪問を数百人以上の担当者で分担して実施するかもしれません。また、エリア的にも複数の地域に跨がり、ほぼ全国で業務を行うかもしれません。そうなると地域や都道府県毎にエリアを管轄する管理者を置いてエリア毎の業務を管理してもらうこともあるでしょう。
このようなケースでは、単なる現場チェックだけでなく、業務の標準化や進捗管理、報告書の作成と提出、さらには全体の計画管理や納品対応まで、運用面での負荷が一気に増加します。
特に以下のような課題が顕在化しがちです。
- 予定作成や訪問計画がExcelや紙では管理しきれない
- 担当者の巡回状況がリアルタイムで把握できない
- 写真付きの報告やチェック内容がバラバラの形式で集まり集計に時間がかかる
- 全体進捗や達成状況を本部でまとめてレポートするのが大きな負担
つまり、大規模店舗巡回業務では、単なる現場チェック業務ではなく、“業務プロセスとしての一貫した運用設計”が必要不可欠になります。
このような背景から、近年ではノーコードツールを用いて、自社専用の巡回業務アプリを構築し、現場運用と本部管理の両面を最適化する取り組みが注目されています。
大規模なラウンド業務の課題
ラウンド業務(店舗巡回・現場チェック)は、一見するとシンプルな訪問業務に見えますが、実際の現場ではさまざまな課題に直面しています。特に、対象拠点が多くなるほど、業務全体の煩雑さや属人化のリスクが高まり、「運用がまわらない」「状況が把握できない」といった問題が生じやすくなります。
1. 訪問・報告が属人化しやすい
多くの企業では、ラウンド担当者が個人の経験や感覚に頼って巡回を行っているケースがあります。訪問の優先順位やチェック内容、報告方法が人によってバラバラになりやすく、組織としての改善サイクルがまわりにくくなります。
2. 報告内容のばらつき・集計の手間
チェック結果を手書きの紙やExcelで報告しているケースでは、報告フォーマットが統一されておらず、後での集計に手間がかかるのが現実です。また、写真やコメントも自由記述のため、定量的な比較や分析が困難になります。
3. 訪問の進捗や状況がリアルタイムで把握できない
紙や個人端末での記録では、本部や管理者が今どの店舗が巡回済みか、どのような指摘があったかをすぐに把握できないという問題があります。そのため、現場での改善指示やフォローアップが遅れ、業務改善のスピードが落ちる傾向にあります。
4. 計画作成・調整に工数がかかる
月単位・週単位で巡回計画を立てる際、対象店舗の数が多いほど調整が煩雑になります。担当者の稼働状況やエリア、店舗の優先度などを考慮しながら手動でスケジューリングするのは限界がある、という声もよく聞かれます。
5. 指摘事項が改善されないまま放置される
現場での課題や指摘事項を拾い上げても、記録の追跡や対応ステータスの管理ができていないと、「言いっぱなし」「報告しただけ」で終わってしまうことがあります。改善につながらないラウンドは、結果的に形骸化し、現場のモチベーションも下がってしまいます。
こうした課題の発生に伴い、効率的に運用するためにツールに求められるポイントも次のようなものになります。まず、多数の業務計画を1件づつ登録するのは現実的ではないため、一括で効率的に計画データを作成する方法が必要になります。また、件数が非常に多い中でも実行中の進捗管理や実行後の報告の管理をスムーズに行う必要があるので、こうした面もポイントになります。
また、エリア毎の管理者を介在した業務プロセスに対応する必要があります。自社の組織体制や業務プロセスに合わせて、ラウンド/店舗巡回の業務を管理できるような柔軟性が必要になります。
NuApp活用時の運用ポイント
ノーコード開発ツールの「NuApp」では、アプリのテンプレートとして「ラウンド/店舗巡回」を提供しています。
この章では、これまで紹介してきた大規模運用(全国で多数の業務を同時に実行するようなケース)の課題に対して、NuAppの場合はどのように運用していくことができるかを解説していきます。
業務計画の効率的な登録(CSVインポート & マスタ連携)
まず、多数の業務計画を一括で登録する方法について解説します。この場合、インポート機能を使います。
インポート機能は、CSVファイルを元に一括でデータを取り込むことができます。また、インポート実行前にプレビュー画面でデータに不備がないか確認できる機能もあります。

実際の運用面では、エクセルに計画情報を書き出して、CSVに出力してからインポート機能で利用する流れになります。このエクセルを作成する段階でアプリ側で必要な情報を全て書き込むと手間がかかってしまいます。NuAppではデータの自動更新機能があるため、CSVには最低限の情報のみを記載し、事前に登録されているマスターデータから必要なデータを紐づけて取得するといったことが可能です。具体的には以下の図のイメージのように、店舗マスターから顧客や支店の情報を取得する流れです。

管理の階層化による業務受け渡し実現
次に、エリア毎の管理者を介在するような階層的な業務プロセスに対応する方法について、実現イメージを紹介していきます。
NuAppでは、業務プロセスを図で描画して、実際にその通りに業務を受け渡して実行することができます。これを活用して階層的な業務プロセスを実現してみましょう。
まず、階層化していない状態として以下のプロセスをベースにします。このプロセスには、管理者と実施者のみが登場します。管理者が担当者と日付、店舗の組み合わせを登録して、実施担当者がそれに従って実施した結果を報告する、という流れです。

次に、エリア担当者を追加して以下のように拡張します。エリア担当者という役割の追加に伴い、業務のステップも増えています。この場合、本部管理者が店舗とエリア、実施期日を登録し、該当するエリアの担当者が実際の担当者と日付を計画して更新、実施担当者がそれに従って実施した結果を報告、結果の確認もエリア担当と本部管理者が順次行っています。この業務の流れはあくまで一例ですが、このようにプロセス図を変更することで、登場人物の増えた複雑化した業務プロセスにも柔軟に対応していくことができます。

柔軟な進捗確認を効率的に実施
多数の業務が同時進行している中でも、問題なく進んでいるのか進捗を管理する必要が出てきます。方法はいくつかありますが、今回は検索機能を活用して、柔軟に条件設定により問題が発生していないか確認するような方法を紹介します。
例えば、実施期日が近づいているにも関わらず担当者のアサインができていないもの、実施日を過ぎているのにステータスが報告済みになっていないもの、等目的に応じてデータを抽出して、それに対して適切な対応を取っていくことができます。

運用していく中で特に多用する条件があれば、最初から条件を設定したリストを準備して、すぐに表示できるようにするのがお勧めです。
多様な報告フォーマットによる結果納品(共有)の効率化
ラウンド/店舗巡回業務は実施して終わりではなく、報告が必要になることが多いです。例えば、顧客から受託したラウンド業務についても結果を取りまとめて報告します。業務の件数が多くなってくると、こうした報告業務も効率的に行う必要性が生じてきます。
最終的にどのような形式で報告するかは別として、NuAppでは様々な機能を使った報告資料取りまとめの方法が考えられます。1つ目は、形式としてはシンプルですが、CSV形式でエクスポートして提出する方法です。見栄えが整っているわけではありませんが、必要な情報は全て記載されており、かつ1ファイルに全業務を含むことも可能です。また、報告で写真を使うこともあるかと思いますが、CSVエクスポートでは写真データを出力することはできません。そういった場合には、添付ファイルエクスポートの機能が有効です。検索条件に合致したレコードに登録されているファイルデータについてZIP圧縮して出力できます。また、より整った報告書形式で提出したい場合は、帳票出力機能が役立ちます。事前にレイアウトを作成しておくと、データ毎にPDFファイルを作成して出力できます。また、直接Webアプリにアクセスしてもらい、結果を閲覧してもらう、という共有方法もあります。権限を落としたゲストユーザーを割り当てることで、見せても問題ない範囲のデータにアクセスしてもらうことができます。

まとめ|ラウンド業務の効率化は“しくみ”で実現する
ラウンド業務は、現場の状況を正しく把握し、課題を見つけ、改善につなげるための重要な業務です。しかし、属人的な運用やアナログな報告方法では、情報の精度やスピードが担保されず、せっかくの巡回も「やって終わり」になってしまいがちです。
本記事でご紹介した通り、ラウンド業務においては以下のような課題がよく見られます。
- 報告が属人化し、ばらつきが生じる
- 集計や分析に手間がかかる
- 進捗や訪問状況がリアルタイムで見えない
- 計画の立案や調整が煩雑
- 指摘事項が改善されず放置されがち
これらの課題は、仕組みとツールの導入で解消が可能です。特にノーコードで構築できる業務アプリは、現場の要件に柔軟にフィットし、短期間で導入できるため、スモールスタートでの改善に最適です。
ラウンド業務を単なる「巡回・報告」で終わらせず、「改善サイクルを回すための活動」として活用していくためにも、現場の実情に即した業務設計と仕組み化が鍵となります。
今回の記事でご紹介したノーコード開発ツールNuAppでは、ラウンド/店舗巡回用のプリセットアプリも準備されており、自由に拡張もできます。
ラウンド業務のアプリ化や効率化にご興味のある方は、ぜひお気軽にご相談ください。